第9章 君のヒーロー
「俺は、
…何をしてたんだろうな
楓風のことも、傷付けないように距離置いたが…
余計イライラするだけだった
それに…悪い虫から守れなかった」
『焦凍は優しすぎるんだって…
…ってえ、虫付いてたの!?
やだ、いつ!?!?』
「…フッ、お前は…
色々これから教えていかねぇと
いけねぇな」
『え、ねぇ意味分かんないよっ!!』
二人の間には、
もう壁などない。
二人の線は
また垂直に交わり合いながら
進んでゆくのだった________
* * *
*焦凍side*
昼休みが終わり、着々と競技が進んで行く中。
楓風のおかげで満ち足りていた幸福感は、
アイツのせいで一瞬で壊されてしまった。
「…邪魔だ」
最終種目が始まる頃。
向こう側から来たクソ親父を見て
少しずつ、また嫌な気持ちが募っていくのが分かった。
嫌でも、思い出す。
愛のない家庭。
地獄のような訓練の日々。
母さんの、泣いている顔。
…あぁ、やっぱり左は、
使ってはいけない。
そう、思ってしまった。
自分でもイラついているのが分かった。
しかし時間は待ってくれない。
一回目の対戦相手は瀬呂。
拘束を受けたものの
一瞬で氷壁を作り、戦闘不能にした。
怒りのせいで上手く調節が出来ず、会場を覆うほどの壁を作ってしまった。
会場には瀬呂へのドンマイコールが響く。
せっかく元気付けてもらったのに。
これを見て、楓風はどう思っただろうか。
そんな自分に、嫌気がさした。