第1章 スタートライン
(え…)
「おい、なにしてンだ」
楓風は、後ろから聞こえる、懐かしい声。匂い。
それだけで誰か分かって、
慌ただしかった心臓が、落ち着いていった。
「えっ、あっ、轟くん!?
こ、こいつ覚えてる?もう忘れちゃったよね!?ほらぁ、小学校一緒だった…」
「そんなこと聞いてねェ。
何してんだって聞いてんだよ」
威圧感のある声。
久しぶりに聞くその声は心なしか低くなっている気がした。
「な、なにもしてないよ!!
い、行こう、みんな」
パタパタと去っていく彼女達を見て、楓風は少しずつ頭が回り出した。
「大丈夫か?」
久しぶりに会った彼はあまりにも背が伸び、顔立ちも大人っぽくなっていて緊張した。
『うん…ありがとう
ごめんね、久しぶりに会っていきなり恥ずかしいとこ見せちゃって…』
軽く微笑んで見せると、彼は眉間にしわを寄せた。
「楓風…、お前…なんで」
聞きたいことがありすぎて何から聞けばいいのかわからない、というような顔をする彼に、何を言われるのだろう、と冷や汗がでた。
それでも、楓風はいつものように何でもないように笑顔を貼り付けて『ん?』と聞き返した。
(お前はそんな顔して笑わないだろ)