第6章 関係
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言いたいことがまとまったとはいえど、内容が内容なだけに話を切り出すのにはなかなかの勇気がいるもの。
いつもと変わらない二人の登下校のはずだが、日に日にその空気が変わっているのは明らかだった。
以前より雰囲気が怖い轟。
言いたくても言い出せない楓風。
きっと周りからはわからない違いだが、付き合いが長いお互いは“いつも”が変わりつつあることに気付いているのだろう。
辺り触りのない会話をしながら、気付けば校舎が見えるところまで来ていた。
『…ん?ねぇ焦凍、門の前になんか集まってない??』
校門の前に群がる人々。
雄英生が何やら囲まれている。
「…報道陣か」
(そっか、オールマイトが雄英教師やってるのもう話題になってるのか)
「あの!!オールマイトの授業について聞きたいことがあるんですが!!」
『…へ!?えーーーっと…さ、流石平和の象徴!!って感じです!!お、面白いです!!』
まさか自分がインタビューの標的になると思わなかった楓風は、驚いて声が上ずってしまった。
続いて焦凍にも聞こうとした記者は、マイクを向けた。
「…俺たち、急いでるんで」
とだけ言うと、楓風の腕を引っ張って校舎内に入って行った。
「…楓風、わざわざ答えなくてもよかったんだぞ」
廊下で一度停まると、焦凍はため息混じりにそう言った。
『そ、そうだけど…
なんか答えなかったら記者の人可哀想だし』
焦っているように見えた記者は、情報を少しでも仕入れないと上から怒られるのか、と楓風は推測したのだ。
「お前は優しすぎだ」
半分呆れて言う焦凍。楓風は、こっちの台詞だよ、と思った。
(きっと、私がてんぱってたの心配して話終わらせてくれたんだよね
あのままだとしばらく質問攻めだっただろうし…)
『いつも焦凍が私のこと優しいって言ってくれる度に思うけど、私が優しいなら焦凍は優し過ぎだよ…。いつも私のために色々してくれるよね、ありがとう!!
焦凍は私のヒーローだよ』
そう笑いかけると、焦凍も軽く笑った。
「…それはこっちの台詞だ
って改まってどうした…」
「おい、時間だ
いちゃいちゃしてる暇があれば席につけ」
聞き慣れてきた相澤の低い声に、二人は背筋がピキッとなるのだった。