第6章 関係
『ねぇ勝己、相談乗って欲しいんだけど!!』
「あ"?言ってみろや」
思い立ってすぐに、電話をかけてみた。
出ないかと思ったが、3コールしない内に出てくれた。
(電話だとちょっと落ち着いて話すんだ…)
と暢気なことを考えながら、話すことにした。
『あのね、私の友達が…えっと
…親と仲悪くてね
親から貰った個性使わないで、ヒーロー目指すって言ってて…。
励ましてあげたいのに、なんて言ったらいいかわかんなくて』
焦凍の事情を勝手に話すわけにはいかないと思い、名前を伏せて、別の近い意味の言葉に変えて説明した。
私の説明を、彼は静かに聞いてくれた。
一通り話すと、電話越しにすぅ、っと息を吸う音が聞こえた。
「個性使わねぇでヒーローだぁ…!?
そいつ…ヒーロー舐めすぎだろ!!舐めプ野郎じゃねぇか!!!」
突然の爆音に、鼓膜が破れかけた。
電話に出た時が思った以上に静かだったため、油断していた。
こいつは常にキレてて爆音出す、天然制のスピーカーだと言うことを忘れてはいけない…。
音量を最低に下げ再び耳に当ててから話した。
『でも、それでヒーローになれたら親を否定出来る…から、ってことなんだと思うの。
親から貰った個性がなくても大丈夫、っていう証明をするみたいな…。
でもそれは何て言うか…、自分が苦しいだけじゃないのかなって』
…思うんだけど…。と自信がなくなって、語尾が小さくなってしまう。最後の方はほとんど聞こえていないだろう。
「否定するだぁ…!?
親から貰ったもクソもねぇだろ、個性なんて、誰から貰ったものだろうがもう自分にあんだから、自分のモンなんだよ!!!
否定もクソもねぇだろ、自分の個性なんだから!!!」
耳から、脳にまで響く勝己の声。
…そう、そうだ。
焦凍の話を聞いていつも感じていた違和感。
上手く言葉に出来なくて言えなかった。
“個性は誰から貰ったものでも、自分にあるものはもう自分のもの“
親からもらったからといっても、それは親のものじゃない。
自分のもの。
ずっと焦凍に伝えたかったのは、これだ。
上手く伝わるか、力になるかはわからないけど。
『…勝己のおかげで、自分の言いたいことがまとまった気がする!!
ありがとう、勝己!!』
また勝己のおかげで、絡まっていた糸がほどけた気がした。