第5章 負けず嫌いと負けず嫌い
(こいつ…反射神経もいいんか!!しかも同時に個性も使って嫌な対策までしてきやがる)
「んでてめぇは結局俺に何が言いてぇんだ!!」
『…私は!!誰にだって負けるのは嫌なの!!例えあんたみたいなやつにだって!!』
初めて楓風の張り上げる声を聞いた爆豪。
(キレるときも静かなタイプだったのに…こいつも相当な負けず嫌いじゃねぇか!!…ほんと、面白れぇやつだな!!!
でも何でそこまで執着してんのか知らねぇけど、アホだこいつは!!)
「…んなの、誰だって一緒に決まってんだろが!!!」
爆豪の叫び声に、楓風はハッとした。
「少なからず雄英(ココ)に来てるやつはみんな、誰だって負けんの嫌で努力してきたやつらだろうが!!!」
(…努力)
爆豪の言葉を聞いて、楓風は止まった。
その隙に近距離に入り爆破をおこす爆豪。
初めてもろに直撃し、よろける楓風。
(…威力、半端ない…。
そっか、雄英に来てる、ヒーロー科にいるみんなは
努力してきて、それをちゃんと認めてくれる人達、なんだ)
小さい頃に経験した"負け"。
その屈辱をバネに"努力"した。
でも周りはその必死の"努力"をさも当たり前のように"才能"だと言って妬み、ひがみ、羨み、褒め、諦め、彼女に勝負にくることさえしなかった。
"楓風は才能があっていいよね、自分はないからどうせ負ける"と。
負けないためにした努力が認められず、自分の存在意義や価値、努力をした意味が分からなくなってしまっていたのだ。
『…ありがとう、爆豪くん』
(…努力だ、って認めてくれる人がいる。
正面から立ち向かって勝とうとしてくれる人がいる。
…あぁ私、雄英(ここ)にこれて、よかったなぁ)
楓風はお礼を言うと、立ち上がって、本物の笑顔を浮かべた。
「……っ!!!」
(な、んだこれ)
『…行くよ、覚悟してね、爆豪くん!!!』