第5章 負けず嫌いと負けず嫌い
『お茶子ちゃん、ちょっと策があるんだけど…。
____…………でどうかな』
即興で思い付いた、勝つための策を語る楓風。
そこには、彼女のトレードマークでもあるいつもの笑顔はなかった。
「楓風ちゃんの言うことなら間違いないね!!
…無理だけは、せんといて…!!」
ニカッ、と笑いながら心配をしてくれるお茶子。
楓風は、あぁ、こんな友達を大切にしなきゃなぁ、なんて思ったあと、すぐに雰囲気がガラッと変わった。
『ありがとう!!…行って!!』
二人が別れてすぐ、楓風の作戦通り
爆豪が飛び出して来た。
(やっぱり、ね。
単独でいきなり突っ走ってくるあたり、真面目くんとは連携が取れてないはず。性格的にそんなことは絶対させないだろうから…。)
「クソモブ女!!話したいことってなんだよ
ちょうど良いから今聞いてやらぁ…!!」
個性把握テストで楓風に散々負けた彼は、負けず嫌いに火が着いて、戦闘を真っ先に持ちかけてくる。
そんなことはお見通しの楓風は、お茶子に核と飯田の場所を先に探しに行かせたのだ。
__相手を拘束するか、核を回収するか、のどちらかがヒーローチームの勝利条件。
そのどちらも可能になるように、あえてバラバラになる、という作戦だった。
『…絶対私のとこに来るって、思ってたよ
勝己くん』
いつもの笑顔がなく、明らかに雰囲気が違う楓風に一瞬だけ驚く爆豪。
(いつもよりちったぁマシな面してんじゃねぇか…!!)
「そうかよ、俺はお前をブッ倒して、お前より上だってことを証明してやらぁ…!!」
『…そう。』
叫ぶ爆豪とは間逆に、静かに一言呟くと。
女子にも容赦なく飛びかかって来た爆豪に、楓風もなんの躊躇もせず、爆豪の右側に爆風を出す。
(右の大振りから来た…。
多分これは癖。
ってことは左に重心が来るわけだから、そのまま右を押せば…)
楓風の狙い通り、爆豪は宙に浮いたまま風に飛ばされ、床に叩きつけられた。
(…動きを読まれた!?こいつも考えて動くタイプか)
「…ッチ、その辺のやつらよりはマシみてぇだな!!」
『あはは、それもしかして褒め言葉?
もっとマシな言い方出来ないの…っと』
そのまま飛びかかってきて爆破を起こす爆豪。
それを風を使いながら軽々と避ける楓風。