第5章 負けず嫌いと負けず嫌い
*楓風side*
気付けば全員揃ったようで、オールマイトの声が響いた。
「始めようか、有精卵ども!!
戦闘訓練のお時間だ!!」
「ヒーロー科最高」
「俺A組でよかった、
色々でけぇ…太ももえろい…」
こちらに視線があるような気がしたが、今はそれどころではなかった。
頭の中と色々な感情がごっちゃになっている。
どうしたらいいのか、わからない。
いつもは無駄にいっぱいの頭も使い物にならないし、癖で貼り付けたままでいた笑顔も崩れてしまっている。
____ダメだ、このままだと…。
「楓風ちゃん、よろしくね!!」
お茶子ちゃんの声で現実に引き戻されて、気付けばもう説明が終わり、くじによってチーム分けされたようだった。
『あ、お茶子ちゃんと同じか!!よろしくねっ!!』
「楓風ちゃん…大丈夫??」
と顔を覗き込まれ、反射的に笑顔を貼り付ける。
『ごめんごめん、大丈夫だよ!!がんばろーねっ!!』
「なにもないならええんやけど…
何かあったら遠慮せんと言ってね!!」
きっとお茶子ちゃんには、私がいつも通りじゃないことはバレバレなのだろう。
他の人に心配はかけないようにしないと…。と心に誓って一度だけ深呼吸した。
「続いて最初の対戦相手は…
Aコンビがヒーロー、Dコンビが敵(ヴィラン)だ!!」
『あれ、早速私達の番…』
(…ん?Dコンビって)
『ば、爆豪くんと飯田くん…!?』
只でさえ落ち着かない時に、
苦手意識のある二人がまとめていっぺんに来たのだ。
私はもう完全にいつものキャラとペースを失っていた。
…感情を抑えることが、出来なくなっていた。
(そして説明全く聞いてなかった…)