第4章 友達
グラウンドβに来て、焦凍を探す楓風。
彼を見つけると、楓風は固まった。
左全体が氷で覆われたデザインのコスチューム。
(焦凍…左、使う気ないんだ…)
そしてこの時になってやっと気付く。
(お父さんとの仲、そんなにこじれてたの…??
私がうかうかと焦凍から離れてる間に、一人で苦しいの耐えてたんだ…
あのとき前より冷たい雰囲気になった、って思ったのと、昨日の個性把握テストで感じた違和感はやっぱり間違いじゃなかった…)
固まった足を、ゆっくりと動かし、焦凍のもとへ近付く。
『し…焦凍…』
「あぁ、楓風
…似合ってるな」
『…ありがとう
焦凍も…相変わらずかっこいい、ね』
「急にどうしたんだ、って…楓風?」
言葉が、上手く出てこない。頭が上手く回らない。
『…え、っと』
(…なんで)
『こ、コスチューム、それ…
左…使わないの…??』
(なんで…私は)
「…あぁ。
戦闘では一切使わない。母さんの力だけで勝つ」
(自分のことだけで
焦凍のことは考えられなかったのだろう。
一人の大事な人すら救えないで
何がヒーローになりたい、だよ…!)
自分の行いに、心底腹が立った。
焦凍はきっと、私が急にいなくなってまともに人と関わらなかったんじゃないかと思う。
口数は少ないし、好んで人と関わりには行かない。
お母さんにも会えてないはず。
(お父さんとずっと上手くいってなかったこと、散々聞いて来てたのに…。私は自分のことしか考えずに黙って焦凍から離れた。
その間に、個性も使いたくないくらいになってたの…?)
涙が、溢れそうになった。
悔しさと、自分への苛立ちと、焦凍のことを思うと。
「…なんでお前がそんな顔してんだ
お前には、関係ねぇだろ」
楓風の頭を、軽くぽんと叩いた。
焦凍なりの、優しさだ。
(関係なく、ないよ…
だって焦凍は、私の友達…ううん
ずっと昔からの、好きな人
…なんて、勝手に離れたやつがなにいってんだって感じ、だよね)
返す言葉がなかった。
今の私には、何も言う資格がないと、思ったから。
あぁ、私は本当に
最低だ