one piece of my Dream [ワンピース]
第9章 心の在処
『………………』
誰かに呼ばれた気がした。
懐かしい、誰かの声。
「……だれ?…」
あたりを見回しても誰もいなくて、暗い闇が広がっているだけだった。
『……しん……』
さっきよりもはっきり聞こえた声に、
涙があふれる。
ずっと聞きたかった貴方の声。
「…キ、ヨ?……」
まだ信じられなくて、姿も見えないのに、
僕はもう貴方しか見えなかった。
1本の光がその先を照らして、
僕を貴方のもとへと導く。
「…キヨ……キヨっ-------…」
歩き出した僕は気づくと走り出していて、
その先にいる貴方を目指す。
少しずつ近づく大きな光の中に飛び込むと、
眩しすぎてまぶたを閉じる。
『しん、元気にしてたか?』
フワリと優しくて懐かしい香りに包まれる。
「…キヨ…」
暖かいその腕の中で僕は、もうずっと、このぬくもりに触れていなかったことを思い出す。
『なんだ?ちょっと会わないうちに、また可愛くなったなぁ』
「……っ。…」
恥ずかしくてキヨにしがみつくと、
『もうすぐで、しんに触れられる。
それまでもぉちっと、待っててくれ』
「えっ---…」
顔を上げるとそこには愛しい貴方の顔が、優しく微笑んで僕を見つめる。
『んじゃあ、そろそろ行くわ』
キヨの体が光に透け出した。
「…ま、待って……キヨっ!」
もぉ、離したくないからギュッとしがみつくのに、
『…しん……愛して---…』
「キヨ!!!」
スっと貴方は僕から逃げるかのように光の中に溶けていったんだ。
『アイシテル』
久しぶりに聞いた貴方の声が僕の心の奥を刺激する。
キヨ………キヨ………キヨ…………