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魔人さんと家飲みしたい

第1章 こんにちは五木荘


実家から二回電車を乗り換えて、少し離れた土地にたどり着いた。
ロータリーの手前でぐるっと見渡し、並び立つチェーン店の名前に馴染みのない店も多く、改めて新天地だと実感する。

前の職場や下宿先は実家から反対側に同じくらい離れた場所だ。
職場の知人から、すべてを遠ざけて過去から逃げたのだと、そう思われても不思議ではない。
しばらくは実家で過ごし失業保険が下りるのを待っていた。しかしこれまでの生活や引っ越し費用がかさんだ事で余裕は無く、フェイクのための求職活動はほどなくして本気モードへ変わり、無事寒くなる前に次の勤務先が見つかったのだった。

(家賃相場は安いけど、商店街は人通りが多くて良い街っぽいな)

後は仲介業者から渡された地図を見て、下宿先のアパートにたどり着けるかどうか。昔から地図を見て確信を持って進んでも違うところにたどり着くことが多い。
最近は内見もバーチャルだ。動画では汚い印象は受けなかったが、窓際の作りや鉄柵は古いように感じた。正直同じくらいの値段で設備の綺麗なアパートは他にもあったが、なんとなく惹かれてしまい「五木荘」との契約を決めてしまった。

(まずは生活を安定させないと。あの時の辛さを忘れるくらい忙しくしてー)
これまでの記憶を振り切るように、これから半年後までの事を想像する。どうかいい方向に転びますように…。そう祈りながらアパートまでの道を辿った。
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