第18章 期末演習試験
「え!?言付き合ってるやついんの?!」
誰もが言のデートの件で驚きを見せていると空気が読めるのか読めないのか、上鳴が先陣を切って言に質問を飛ばした。
『付き合ってはないけど…』
「え、まってだれだれ?!雄英高校の人?!」
「それとも他校?!てか年下?同い年?年上?!」
「知り合ってどのぐらい?!」
「デートに誘ったのはどっち!?」
そして上鳴の質問から火蓋が切られたように始まる質問攻め。言は四方八方から飛び交って来る質問に頭を抱えた。
『ま、まってそんな一斉には答えられないよ…!!』
芦戸が放った冗談半分の質問がまさかここまでの騒動になるとは…言も1年A組の全員もパニック寸前だ。
『とりあえず明日デートさせて頂くのは年上の方で、詳しい職業は言えないんだけど…以前すごくお世話になった人なの。前からデートに誘われてはいて丁度お互いに都合が着いたから明日デートしようってことに…』
教室の真ん中で大勢に囲まれて話す様はまるで事情聴取のようで言はどうしてこんなことになったのだろうと心の中で考えながらもとある人物とデートすることになった経緯を説明した。そして大方の説明が終わると言の横で話を聞いていた百が体を震わせながら顔を上げて迫真の表情で言の肩を掴んだ。
「そ、そんな何処の馬の骨かも分からない人に言を嫁に出すなんて、許せませんわ!」
『落ち着いて百ちゃん。話が壮大になり過ぎてる』
「言!デートに行くなら私も一緒に行きますわ!」
『それはもうデートじゃなくなっちゃうね。それに相手の人もいきなり百ちゃんが来たらビックリしちゃう』
その後、ごねる百を何とか説得してデートに行くことの了承を得た言。教室の真ん中で私は何をしているのだろうと遠い目をしながら彼女はため息をついた。
「とりあえず何かあった時の為に”コレ”は渡しておきます」
『何これ…?』
「防犯ブザーですわ。もしもの時はそれを鳴らしてくださいまし」
『うん、いらないや』
言は眉を僅かに下げて困った顔のまま薄く笑い、百に手渡された防犯ブザーをそっと返した。