第29章 29
「…私の父はヒーローをしています。とは言え有名なヒーローでは無いです。母は父のサポートを…」
「へー!それで、凛ちゃんもサポート課なんだね」
「勝己のコスチュームも凛ちゃんがサポートしてくれてるの?」
「はい!勝己くん本当に、凄いんです!!私が担当で良いのかなって思う時が有るんです。けど、作った物がダメならダメってはっきり言ってくれてプロになってもずっとサポート出来たらって!」
コスチュームやサポートの話になると何故か止まらなくて勝己くんがどれだけ凄いのかを話す空間になってしまった。勝己くんの両親は嬉しそうに聞いてくれてとても優しい目をしていた。勝己くんは当たり前だと自信の溢れた顔をしたり恥ずかしいのか顔を赤くしたりと表情がコロコロ変わって面白かった。
食事が終わり食器を運ぶそれを勝己くんが受け取り洗い始める。
「今日のメシは美味かったか?」
その言葉に目を丸くして驚いた、今まで誰にもバレていないと思っていた。でも、勝己くんは気がついていた
「うん。凄く美味しかった!」
「良かったな」
本心から答えると勝己くんは素っ気なく返事をした。そのあと、手元を少し見つめて
「メシぐらいなら…いつ来ても食わせてやるよ」
とボソボソと言ってくれた。嬉しくてうん!と大きな声で答えるとお父さんとお母さんが近づいてきて、またキッチンが狭くなってしまった。
しばらく休んでいると時計を確認して驚いた。既に9時は過ぎていて慌てて帰る支度を始める。お母さんは泊まっていけばと言うが1週間帰っていない家が心配だった。
「また、来ます。本当にご馳走様でした」
「勝己が送っていければ良いんだけど…」
「いえ!タクシーお願いしたので大丈夫です」
そう言ってお辞儀をして勝己くんの家を後にした。
楽しかった。
美味しかった。
幸せだった。
3つの感情が心を満たしてくれた。