第29章 29
「先生、私…もう家に帰りたいです」
そう言うと採血をしていた看護師さんが私を驚いた顔で見つめてきた。
手元は狂う事は無かったが、その視線が痛かった。一方の先生は少し考えて私を眺め
「確かに、体には問題もないし…君が帰りたいって言うなら」
「せ!先生!!」
「元気なのに入院している必要もないからね」
ニコリと笑いかけられた。一週間以上入院と言われていた私は結局病院には2日しか居なかった。荷物は塚内さんが持ってきてくれた2つだけだった。カバンからショートパンツとTシャツを出して着替えた。手には肝試しの時に外していたブレスレットを付けカバンと相澤先生がくれたであろうお菓子の袋を手に持ち病院を後にした。私の事を心配するlimeは何通か来ていた。相澤先生や焦凍、出久くん、鋭児郎けれど開く事はしなかった。
塚内さんが来た日limeをしたのは勝己くんだった。なんの連絡もして来ない…してくるはずのない、勝己くんに。案の定、連絡は返ってこなかった。
「お世話になりました」
そう告げて、病院を後にした…看護師さんの私への視線と噂話が怖かった。