第2章 暴食の末路
「ヨルルが、死んだ……?」
冬至祭前の断食の時期に、クマラは沢山の食料を蓄える役目を与えられ沖に出ていた。その間、断食に耐えきれなかったリンリンが、その暴走を止めようとしたヨルル及び数々のエルバフの巨人を屠ったのだ
いつか死ぬ。それが命だとクマラも理解していた。だが、心を許したものとそうでないものの命の終わりは、感じる重みが違うと彼は知る
海王類を海岸へそのままにして、クマラは脚を異様な力で動かし瞬間的な移動を見せた。その足で辿り着いたエルバフの村は、炎の放つ終焉のような地獄と化しているのをクマラは目にする
「……リンリンは何処だ」
横たわるヨルルを泣きながら見つめるヤルルに、クマラは至って冷静な声で聞いた。小さく首を横に振ることしかしないヤルルに、クマラは目を背け近くの巨人にまた同じ言葉を放つ
居場所を聞いたクマラは、なんの躊躇いもなくその目的地へ歩き始める。エルバフの巨人たちは彼が何をするのかわからず、ただただそれを見届ける事しか出来なかった
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「カルメル」
「!クマラさん……」
どこかへ行こうとするカルメル達に追いついたクマラは、ただ一つリンリンに目を向けた。抱きつきたそうに疼いているリンリンへ、クマラは腕を広げる
「クマラさーん!」
「……リンリン」
複雑な表情でリンリンを抱きしめるクマラは、カラメルに「俺はついていけない」ととあるものを渡した。リンリンから聞いていたのだ、もう少しで誕生日であると
彼にとってエルバフの戦士も、リンリンも大切な友である。リンリンに対しては妹のような、そんな親しみを持っていた。それ故に今回の複雑な事件に何も口に出来ないでいる
「クマラさん来ないのー?」
「あぁ。俺はまだやることがある」
「んー……」
不満げなリンリンは、「また会いに行ってやるから」とクマラに撫でられると満足して頷いた。いい子だと言うクマラの表情は、これまでにない程に柔らかく、暖かい
遠ざかる子供達を目にしつつ、クマラは一人深いため息を吐いた。何百年と生きてきた中で、初めての苦痛。初めての心の痛み……。普通の人間は、こんな苦しみを受けることが有るのかと頭を抱えた