第2章 暴食の末路
少女の名は、シャーロット・リンリン。人間の子供でありながら巨人族の子供と大差ないその姿に、クマラは興味を持っていた。リンリン本人も、周りの巨人族の優しさや、同じ人間でありながら自分と同じどこか違う部分を持っているというクマラに笑みがこぼれる
そんなある日、エルバフ恒例の冬至祭前の断食が始まった。食べることが好きなリンリンには少し苦かもしれないなと話すクマラに、エルバフの長“滝髭”のヨルルはその髭を撫でつつ目を細める
「ザバババ!!お前も長らく子に接すれば優しさも生まれるようだな、クマラ」
「……それは褒めているのか、ヨルル」
まるで愛おしいようなものを見る目でクマラを見下ろすヨルルにクマラは眉を八の字にしつつ、でもまぁ反論は出来ないかと子供達を見る。百年近くこのエルバフに滞在するクマラは、多くの人と出会い、接し、少しずつ人との対応の仕方を覚えた。これは彼なりの“成長”だろう
そうこうしていると、遠くの方から巨人の子供が一人クマラの元へと走ってくるのが二人の視界に映った。その子供は大きな剣を持っており、クマラの姿が見えると嬉しそうに笑顔になる
「よぉハイルディン、今日も稽古か?」
「そうだ!立派な戦士になって、クマラさんと一緒に海に出るんだからな!」
「可愛い夢だこって」
自慢げに話したハイルディンの頭を撫でながら言った言葉に、当のハイルディンは頬を膨らませて「絶対強くなってやる!」と稽古に向かっていった。子供からの人気が絶大なクマラを見て、またヨルルに笑みが浮かぶ
「お前がこのエルバフに来てよかった。ハイルディンも他の子も、皆元気にお前の後ろを追いかけていく」
「目標がズレてると思うがな」
エルバフの戦士ならば、追う背中はエルバフの長であった方が良いだろうとクマラは思う。それでも、子供達はクマラに何か理想を見て、追いかけている事をヨルルは分かっていた。クマラには、どこか惹かれる何かがあるのだと
本人は疎いことが多い。それは言われたとしても気付くことはあるまいと、ヨルルは空を見上げながら髭を撫でるのであった