第2章 暴食の末路
クマラにとって時間とはただの生活基準の一つでしか無かった。寝る時間、起きる時間など、生活をする上で定めたものを守る為のもの……それだけ
だから、年老いていくカラメルを見て彼は不思議と首を傾げる。どの原理で歳をとるのか、歳をとるとはなんなのかという原理がクマラには分からなかった
成長と歳をとる事は類似しているとエルバフの長は言っていた。そんなものなのだろうかと、彼は日々考えている。自分のように不老不死の存在がいてくれないだろうかという、なんの意味もない憂いでさえ感じてしまう事だってあった
そんな中、カラメルがエルバフの土地で羊の家を建ててから四十年近くの月日が流れた頃。一人の少女が海岸で一人もぐもぐとお菓子を食べているところに遭遇したクマラ。その少女の服装はエルバフ特有のものではなかったが、身体はとても大きかった
「こんな所で何してるんだ、お前」
「あ~!人だ~!」
好奇心に負けたクマラが話しかけると、少女はとても嬉しそうに駆け寄ってきてクマラを抱き上げ、抱擁した。突然事で一瞬固まったクマラだが、すぐに気を取り直し少女の腕から逃れる
「いきなり抱きつくやつがあるか」
「だって、久しぶりの人だったから……」
しょぼ、と落ち込む姿を見て(子供のこんな姿は流石になぁ)と胸を痛めるクマラ。少しずつだが、彼にも感情というものが湧いてきている様だ
そんな時、この少女をこのままエルバフへ連れていくべきかと悩むクマラの前にカルメルが現れる。此奴ならいい案を出すだろうと、彼女の前に少女を連れていった
「あら、クマラさんが女の子を連れているだなんて珍しい」
「さっきそこで拾ったんだ。1人みたいなんだが」
羊の家という孤児院のようなものを経営しているカラメルは、その話を聞き「預かりましょう」と微笑んだ。何かよくわかってない素振りの少女はクマラとカルメルの顔を見比べている
この後エルバフへと少女を連れていった二人は、少女が自身と同じ背丈の子供がいることに大変喜び、すぐに馴染んでいくのを遠目で見守った。子供を慈しむ心が、この時クマラには芽生えた様だった