第9章 新規海兵育成記
「三時の方向に海賊船を発見!!旗からしてビッグマム海賊団の物と思われます!」
船内に響いた放送に、センゴクは電伝虫を繋ぎ外の状況を映させる。その船はすぐ近くを進行しており、相手もこちらの様子に気付いている様だった
ここに居るのはセンゴク直属の部下と教官として来ているクマラ、そして新兵のみである。一人一人が精鋭であるビッグマムのもの達にこの面々で挑んだ所で、多くの犠牲を出すということは考えずともわかった
センゴクは電伝虫でそのまま海軍本部への帰還を急ぐ事を告げ、海賊船は無視する方向で話は進んだ。クマラもその報告を耳にし、甲板へ少しだけ顔を出し船内放送を見張り達に報告しに向かう
「クマラ、教官っ!すっ、少しよろしいでしょうか!」
「?どうした」
船内に戻ろうとしたクマラを見張りの新兵が吃りつつ呼び止めた。三時の方向を指さした新兵は、手と口を震わせクマラにある情報を報告する
「びっ、ビッグマム海賊団!戦闘態勢!砲台を用意しております!」
「!全海兵応戦体制!迎撃準備を始めろ!」
視線を船のほうに移したクマラが見たものは、こちらに船体を向け勢いよく進行しつつ、砲台を準備したビッグマム海賊団の船だった。完全にこちらと戦う気でいるのか、あちら側の式は高まっているのが耳に聞こえてくる
「新兵はなるべく後衛の衛生兵達に回れ!海賊を目の前にすれば、なるべく多く仲間と迎撃しろ!一人ではやるな!」
新兵が少しでも多く生き残れる方法を口にし、クマラは帽子を深く被り直す。見聞色を使える上にクマラの事を知っている人間ならば何の役にも立たない帽子だが、今はこれに縋るしかクマラには出来ない。せめて、自分の知り合いでないことを祈るばかりである