第9章 新規海兵育成記
あれから三ヶ月。あと数日でクマラが訓練から外れると聞き、クザンはやっと怯えずに済むと胸をなで下ろしていた。そんな中、ボルサリーノ達が話していた新兵の為の遠征の話が出てくる
教官が一名と中将以上が一名配属されるその遠征は一ヶ月間行われ、上層部の会議にて行き場所が決まり次第妥当な引率者が選ばれる。今回は新世界に行き先が決まったそうで現在引率者を決めている最中と新兵に報告される
「──────って事なんすけど、誰になるんすかね」
食事の時間、唯一少しだけ心を許した先輩達に話をしたクザンにボルサリーノ達は少し悩む仕草を見せた。メンバーは特にこの人、と決められている訳ではなく会議で決められるのだ
「今回クマラさんが教官としてついてるみたいだし、クマラさんは確定なんじゃないかねぇ~」
「ひぇ……」
死ぬかもなんて言うクザンに反し、サカズキは少しばかり羨ましそうにクザンを見ていた。ボルサリーノは何度か廊下でばったり、なんて事があるらしいがサカズキはここ数ヶ月顔を見ていない。ボルサリーノと共にかの“手合わせ”の話を聞いて、急ぎその時の仕事を片付けるも間に合わなかった
代わってやりたい気持ちはボルサリーノやサカズキにはある。だが、遠征で見えてくる姿もあるのだと二人は思い、代わりにと口にせずクザンを応援することにした。この様子では自分達のようになることは無いだろうとたかを括って
「あ~、嫌だなぁ……」
同室の同期に憚らず、クザンは頭を抱えてため息をつく。大丈夫かよと半笑いの同期はどうしてそうなっているのかさっぱりのため、そう言うしかなかった
「嵐で中止とかになんねぇかなぁ……」
窓から見える夜空に目を細め、クザンは深いため息をもう一度吐き出す。中止という言葉に何となく察した同期は「そうだなぁ」と布団に潜った