第9章 新規海兵育成記
「アイツら、ただのバケモンじゃねぇか……っ」
クザンは自分の目にした出来事に身体を震わせ、忘れようにも忘れられない光景に目を閉じる。それは、とある人物の来訪から始まったものだった
気まぐれで訓練場へやってきた海軍中将ガープの、本当の気まぐれな手合わせ要請に応じたのはクマラ。ゼファーは元大将とはいえ教官としての仕事がある為そちらで忙しく、クザンの監視及び訓練を任されていたクマラは、クザンがゼファーの訓練を素直に受けているということもあってそれを受け入れた
そして、行われた手合わせは新兵を軽々と気絶させる圧のぶつかり合い……手合わせどころか、正に殺し合いのような迫力がそこにはあった。海軍に来て覇気を鍛え始めたクマラと、前々から覇気を使うガープには圧倒的戦力差があったが、それ以前に元からの身体能力の差が覇気での差を縮め同等の戦いを見せる互角の戦いは圧巻の一言に尽きる
そしてクザンはそれを見てただ唖然とし、足の力が抜け膝から崩れ落ちた。最初には感じられなかった強者のオーラをその目と肌で感じ、絶対に敵わないのだと思い知らされる。1度の攻撃で風を放つ程の重い拳を放つガープに対し、その一撃一つ一つを有り得ぬ程の身体の柔らかさと見聞色で躱していくクマラ。そして隙をつき放った嵐脚を、ガープは武装色で受け止めてまた拳を振るうのだ
あんな戦い方ができる両者にクザンはその場から離れることが出来ず、大将センゴクが二人を止めに入るまで二人の手合わせは続いた。その止めたセンゴクもガープの拳を覇気で受止め、クマラの肩を掴み止めたクザンからすれば化け物の域にいる人間。一番恐ろしいのは、訓練場の新兵達がバタバタと圧で倒れていく程の戦闘の中、手合わせ中の二人は全く傷を負っていなかったことである
彼らにとってあの戦いは、本当に“手合わせ”だったのだ
まだ身体の震えを感じたクザンは、不意に自分の肩を叩かれ勢いよくそこから離れる。振り向くと、そこには自分と同じような背丈で制服に身を包む二人の姿があった
「お前さんクマラさんに喧嘩売っちまったんだってェ~?よォくやるねぇ~」
「ガープ中将との手合わせ中にも居合わせた様じゃが、大丈夫か」
「……大丈夫だと思います?」
先輩だと気付いたクザンは咄嗟に敬語が出た。先程の事が若干トラウマになったらしい
