第9章 新規海兵育成記
サカズキやボルサリーノが入隊して約一年。四ヶ月に一度行われる試験にてまた新たな新兵が加入してきた。今回は少しばかり問題児が目立つとゼファーは頭を抱えている
そう、皆模範的対応をする中一人だけ反抗的な新兵がいるのだ。名はクザンと言い、実力は試験の中でもトップクラスではあったもののやはり素行の悪さが目立ってしまう
最初こそゼファー自身で対応しようと試みたが、尽く指示を無視し黙々と一人で訓練を行うクザンには何を言っても聞かないことが判明。明らかに上の立場の人間を舐めている状態だったのだ
そこでゼファーはとある人物に応援を要請した。そこまで問題児なのかと相手は肩を竦めつつも、また同じ四ヶ月という期限に了承する
「……で、お前か問題児」
「?」
訓練中にも関わらずモグモグとなにか口にしているクザンに対し、クマラは呆れつつそれを没収して訓練表を突きつける。ムッとした顔のクザンは表を捨てたかと思うと、大きな手をクマラに伸ばした
食べ物を取り返そうとしたのか、それに気付いたクマラはそれを躱し「ここに来たからには上には従え」と口にする。その言葉に顔を顰めたクザンは「意地汚い大人の言うことを聞くつもりなんてねぇ」と口にした
海軍としてやっていくのにこれ程まで反抗的でやっていけるのかとクマラは不安になり、この四ヶ月で修正しなければ除隊は免れないなと顎に手を添える。その様子を見つつクザンは隙をついたつもりでか、一気に距離を詰めてまた手を伸ばす
「詰め方が甘い」
「うおっ!」
伸ばした腕を掴まれ、食べ物を持っていない方の手で勢いよく壁の方へと投げられたクザンは、体勢を整えることが叶わずそのまま激突。いつぞやの光景を思い出すその様子に、遠くから見ていたゼファーはこのまま任せて良さそうだと他の新兵に指示を出し始めた
「……お前、何もんなわけ」
「お前のその反抗的な性根を叩き直すよう頼まれた」
「そういう意味じゃないんだけど」
一瞬で目の前にやってきたクマラに内心驚きつつ、クザンは崩れる壁の中からのそりと起き上がる。返して欲しかったら訓練に混ざれと言われ、この男に逆らうと余計変な傷を置いかねないと渋々クザンは了承した