第9章 新規海兵育成記
「クマラさんじゃ」
「お~、クマラさ~ん」
食堂に行くと、身長で分けられたテーブルの2m50cm~3m台の方に問題の二人が座っていた。ゼファーやガープはそちらだが、クマラは2m50cm未満の為2m49cm以下のテーブルに向かう
それを見たサカズキ達は、そういう制度無くしたらいいのにと残念そうにその背中を見送る。そんな2人を他所にテーブルの前に食事を持って腰を下ろしたゼファーとガープは、ギラりと光る目で二人を見た
「お前らクマラに気があるのか?ん?」
「まさかあの人から教わりたいのはそういう感情があるからか?訓練に支障が出そうだ」
「「ひぇっ」」
自身と同じ背丈の上司に肩を震わせ、サカズキとボルサリーノは滅相もないと顔を下げる。二人とも後ろめたい気持ちがあったのだ
最初に一番反抗していたサカズキは、今一番クマラにベッタリな状態であり、つい最近クマラを不慮の事故で押し倒して顔を見たばかり。その時見た紅い瞳を忘れられず、今でも赤いものを見るとその時の事が思い浮かぶ程、彼の中では相当な印象だった模様
ボルサリーノは、クマラと過ごす内にゼファーより辛い鍛錬も「彼といられるなら何十倍もマシ。彼の言うことは正しい」と考えるようになるほどクマラに心酔していた。彼の髪や手の甲に口付けられる日が来る事を心待ちにしている程である
懐いたと言うにはあまりにも近い距離に、ガープもゼファーも気付いている。二人がどうしてもクマラから離れたくない理由だって、ガープは特に分かるのだ。気を許し、自分の支えとなる目標を失いたいと思う方が少ないだろう。その中に恋慕が混じれば、余計に手放せなくなる
「全く、クマラも少しは自重して欲しいもんだな!どんどん敵作っていくんだから困ったもんだ!」
「あぁ、お前たち。此奴は勿論だが大将センゴクもクマラに気があるから気をつけろよ」
俺は誰も応援せん、と水を口にするゼファーを他所にサカズキとボルサリーノは顔を見合わせてあの堅物そうな人がと考え込む。クマラを好きになる人物に、堅物やチャラいなどの条件なんて無いと気付くにはまだ時は早かった