第9章 新規海兵育成記
クマラが新兵の訓練を始めてから四ヶ月が経過した。残りの訓練は全てゼファーに任せることとなり、クマラはガープの補佐官として集中する事になる。そこで少しばかり不満を漏らす者たちが現れ始めた
「サカズキとボルサリーノってあの二人じゃねぇか」
「そうなんだよ……」
クマラにこのまま教えて欲しいとゼファーに頭を下げにいったのは、以前から熱意を込めてクマラに教えを乞うてくる二人。他のものはゼファーでも構わないとの意見だが、二人は頑なにクマラを志願するらしい
ゼファーは海軍の人間としての意識と教官としての実力が備わっている。対して、クマラは情報さえ手に入れられればここを抜けるつもりでいる、正義なんてあったもんじゃない存在。正義云々は話さなかったとはいえ、いつ抜けるかも分からないことはクマラから二人へ話してある。頭を下げてまで自分から教えを乞う二人にクマラは謎しか感じなかった
ゼファーとクマラがどうしようかと頭を抱えていると、部屋の扉をノックせずに誰かが入ってきた。そのような事をしてくる人物を一人しか知らないクマラは、手元にあったクッションをその人物の顔へとぶん投げる
「はぶっ!」
「ノック位しろ、いい大人が」
「いやらしい事してないならいいじゃねぇか」
「そういう問題じゃないぞガープ……」
やましい事でもあるのかと怒るガープに対し、仕事中なんだよこっちはとクマラがペンをクルクル指で回す。ガープはそれを見て俺は終わったと自慢げな表情
それら全てクマラによる管理の元であることを自覚しているガープは、どうやらクマラを休憩に誘いに来たらしく正義のマントは脱いでいた。それに気付いたゼファーは「今は休むか」と席を立つ
「そろそろ昼飯だったか……よし、行こう」
お腹がすいたのを感じ、クマラもソファから腰を上げた。ガープは嬉しそうに笑うが、何かに気づくと慌てて辺りを見渡しとあるものを持ち上げる
「クマラ、ちゃんと帽子付けとけよ」
「ん?ああ……すまん、ありがとう」
ガープが急いでとったものは海軍帽。出来る限り顔の露出を避けなければいけないクマラに考慮した結果だと本人は思っているが、実は好きな人の顔を他の誰かに見せたくないだけとは思ってもみないだろう