第9章 新規海兵育成記
《ボルサリーノside》
ウンウン考えていると、目の前に手が差し伸ばされていることに気付いた。咄嗟に掴み返すと、伏せたままだった身体は軽々と手が引っ張れるのを基準に立ち上がる
「お前、蹴りが得意みたいだが振りが甘い。少し身体の軸がズレてた」
「へ……?」
体を向き直されたと思うと、まずはわっしの得意な事に指摘を入れられた。軸は兎も角、蹴りは新兵の中でもダントツに早いと同期達から褒められたばかりだったから少し傷付く
何がいけないんだ、と頭を抱えそうになると教官は「足を鍛えろ」と言ってきた。速さとバランスは蹴り技は大事である上に、スピードだけでは軽いと重いとではダメージ量も違うだろうとの事
速さとバランスだけでも十分であるが、得意として扱うなら重厚感も足した方がメインとして扱いやすいと説明してくれる教官になる程と頷く。ただ単にダメな部分を指摘するだけでなく、こうすれば良いと提案してくれるのは助かった
「お前!こっち来い!」
「はっ!」
先程蹴り飛ばされたサカズキは、少し回復したのかすぐ様駆け寄ってきてわっしの横に背筋を伸ばし並んだ。わっしの指摘が終わったあとのため、今度はサカズキが受ける番である
「お前の拳は喧嘩が強い輩と同じ振りだ。構えから俺に届くまでは確かに早かったが、拳のにぎり具合と肘の上がりが少し弱い」
こうな、とサカズキの体で教えていく教官に、力の差を見せつけられたサカズキも従って身につけようと耳を傾ける。サカズキの戦い方は拳を使い、尚且つ剣術も習いたいとわっしと同じような事を言っていたため腕を鍛える事を言い渡された
「二人とも戦闘の見込みはあるが、少し目を疑う所が他に多々ある。今後ゼファーや俺を行き来すると思うが、俺の方では基礎は勿論社会的マナーの方も叩き込む予定だ。強くなって、位が上がるにつれて必要になっていくスキルでもある。今は必要ないだろうと思っても歳をとっていくにつれて覚えが悪くなるからな、今のうちに体に覚えさせておけ」
「「はっ!」」
入隊時に教わった敬礼をすると、掌は自分の方なと背伸びして手の角度を変えさせられた。掌を上司に見せると無礼に当たるそうだ、気をつけよう
この後ゼファー教官からクマラ教官の話を聞き、ゼファー教官より歳上であることを知ったのはまた別のお話
「詐欺だよねぇあれ」
「詐欺じゃ」
