第9章 新規海兵育成記
「どうだった?新兵は」
「身体の作りが違うのがチラホラ居たな。入隊前から鍛えてきてたんだろう」
ガープの書類の整理をしつつ、問われた事を返答しては「これ今日まで」とガープの机に置いていくクマラ。うげ、とガープは嫌そうな顔をするが、頑張れとクマラに頭を撫でられ渋々ペンを持つ
ゼファーへの訓練結果報告書を書きつつ、ガープの書類を合間合間で様子見して補佐するのは相当器用だなとガープはジッとクマラを見た。その視線に気付き、帽子の鍔の下から薄らと見えるクマラの横目で見る瞳に、ガープはドキッと胸を高鳴らせる
色っぽさは相変わらずなんだとソワソワしつつ筆を走らせるガープに対し、書き上げた報告書に誤字脱字がないかを確認したクマラは席を立ってゼファーの元へ行く事を告げた。クマラがまた居なくなると少し拗ねかけたガープだが、補佐官と教官を両立するならこれはよくあること。今のうちに慣れなければとクマラを送り出す
新兵のために貼りだされた案内用の紙を頼りにゼファーの部屋に着いたクマラは、報告書を数枚提出しまたすぐに部屋を出る。忙しいな、とゼファーに微笑まれクマラは「本当に」と溜息を吐いた
「あっ、教官さ~ん」
「?」
クマラがガープの部屋に帰る途中、廊下を歩いていると後ろの方からクマラにとって聞き覚えのある声が話しかけてきた。振り返ると訓練の時に体術と剣術を学びたいと話していた青年がそこにいる
「どうした……あーすまん、名前なんだったか」
「ボルサリーノ三等兵ですよォ~、本当に名前覚えられないんですねぇ~」
「顔と名前が一致するのにあと二、三回はこの会話するが許してくれ」
で、何の用だ?と聞くクマラに対しボルサリーノは後ろを向いて何かを掴むとそれを引っ張り出した。掴んだものが誰かの手であり、そこにはボルサリーノと同じ背丈の男が眉間にシワを寄せて立っている
何事だとボルサリーノに目を向けると、どうやら自分達と変わらぬ服装のクマラに対し少しばかり不満があったようだ。そういった視線は多く感じていたクマラはなるほどなと顎に手を添える
「お前が不満なら、手合わせをしよう」