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平等な死などない【ワンピース】

第8章 親友の定義※


ロジャーの声は小さく、ロジャーの寝室にはベッドの軋む音だけが響いていた。だが寝室は廊下に繋がっていないとはいえ壁一枚の隔たり。特に副船長レイリーの自室と寝室は隣である為、本を読んでいるレイリーの耳にはロジャーの甘く上擦った声とベッドの軋む音がよく聞こえていた

「……中々ご熱心だったな」

深くは聞かないつもりでいたレイリーだが、廊下に響いていないかの確認だけをしてあとは二人の様子を伺う。クマラが相手なのだからレイリーも心配する必要は無いと思ってはいるものの、妙な心配だけがレイリーをその行動に移させていた

クマラはロジャーの愛する人だ。だが、嘘をついたとしても自分の望む愛情が求められないほど二人の関係は歪で、正常なものでは無い。今日やっとクマラと念願の行為が出来たロジャーも、後になって虚しさに気付くだろう

「……応援するべきなんだろうが……」

レイリーは本を読みつつ、片手に持っていた酒瓶を口につけ上へと傾ける。ロジャーの相談に乗り、少しずつクマラに探りを入れているうちにレイリーもどこか彼に絆されている部分があった

最初はロジャーの愛する者として一線を引いていたが、クマラは少し無神経なところがある。無表情で、さも当たり前の様に心の隙間を超えてくるのだ。クマラにとっては距離感が掴めないだけで、心の距離感を覚えれば普通程度にはなるものだが、レイリーには少し違うようで

ロジャーを応援している反面、どこか自分の中で仄暗い感情が芽生えていることにレイリーも薄々感づいている。ロジャー海賊団公認となりつつある二人の関係に、少しばかり羨ましいなと考えてしまうのだ

自分だけをと我儘を言うつもりは無い。けれど、少しでもその視界に自分も入りたかった。ただの話し相手なんかじゃない、別のもっと深い関係の相手として

それこそロジャーのいう親友とまでは行かずとも、ロジャーと自分のような“親友”でありたい。一線を軽く超えてきて、荒らすだけ荒らすなどあまりにも卑怯じゃないか

後日にでも、二人で酒を飲む場でも設けよう。レイリーはそう考えつつ隣から聞こえ始めた二人の会話に耳を傾ける。先程の行為の音が無ければ、本当に親友と言った会話にレイリーはただ酒を飲むのであった
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