第7章 ゴッドバレー事件(※)
「良かったな、海兵がいる」
海兵達による救出作戦が決行されているのを確認したクマラは、未だ何が起こっているかは知らないにせよと子供を海兵に引渡しに行く。子供は「お前も一緒に行くんだえ」と言うも、クマラには引き戻らねばならない理由があった
いつも身につけている、マントがないのだ。エルバフで新調して以来ずっと身につけていたマント。ヤルルとヨルルが選び、お揃いにしようと色を見繕った思いであるもの
海兵に天竜人の子供を渡した後、クマラは海兵が止めるのも聞かず元の道へと戻る。どこにあるかは分からないが、どこかにある筈だと信じて来た道を走るしか無かった
「あったあった」
地下牢の監視部屋の備品入れに、妙に丁寧にマントは畳んで収められていた。その近くにあった銃を目にし、指以外の銃の性能を久々に試すという単純な理由でそれを腰に提げる
地下から二度目の脱出を果たした時、外は一度目の時より悲惨な状況になっていた。轟々と炎が燃え盛り、煙が酷く血の匂いだってする。こんな状態では流石に救出船も離れているだろうと、どこかこの島から抜け出せる方法を模索するクマラ
そんな中、誰かが自分を呼んだ気がした。辺りを見渡してもクマラの周りは炎と瓦礫しかなく人がいる気配はしない
気の所為だったか。それではと炎が無い方に行こうとしたクマラは確かに自分を呼ぶ声を耳にした。何処からか分からないためもう一度聞く為耳を澄ますと、それは炎の先から聞こえている
月歩で炎の上を飛んだクマラは、その向かいにいた見覚えのある人物に目を見開いた。どうしてここに、なんでお前が。そんな事を考えるもそこに居るのは紛うことなき親友で
「ロジャー!」
「!クマラ~!!」
目元を拭ったロジャーは勢いよく腕を広げた。月歩を解いて地面に落ちていくクマラを、ロジャーはしっかり受け止めてその感触を確かめるように強く抱きしめる
「クマラ、クマラ……!」
「苦しい、ロジャー」
「今だけは許してくれ!」
愛おしげに頬を擦り寄せるロジャーに、クマラは溜息を吐きつつその背に腕を回す。ロジャーはそれが嬉しかったのか、数分ばかりクマラを解放することはなかった