第6章 親友
しっかり生存しているクマラは、前線に復帰して小枝を折るように海兵達の心をへし折っていった。命の大切さというものを知っているクマラの、少し形の歪んだ優しさである
海兵として道半ば挫折しても、命さえあれば何かはできる。もし心をへし折られたモノの中に将来中将程になりたいと求めるものがいるならば、こんな所で心を簡単にへし折られていては話にならないのもまた事実
現実を突きつけつつ、ガープとロジャーの戦いが甚大な被害を出し始めたのを見たレイリーが撤退の合図を出し始めた。これ以上続けていてはお互い悲惨な結果になる可能性を示唆したのだろう、相手も撤退号令が出ている
レイリーが指揮を取るならばと、興奮して合図が見えていないロジャーの元にクマラが向かう。エルバフでよく見た覇気使い同士の戦いに少し血の気が騒ぎつつ、今はそれ何処じゃないとロジャーの後ろに回った
「ロジャー!撤退だそうだ!」
「!?」
まるで幽霊を見たような顔に、なんだお前とロジャーを担ぐクマラ。ロジャーもガープもポカンとする中、クマラはいそいそとロジャーを抱えて撤退し始めた
「まっ、待ってくれ!」
「また今度だガープ~」
「お前じゃなーい!!」
気になる事でもあったのか、そう言ったガープは「お前!前に俺と会ってないか!」と声を張る。自分に言っていると気付いたクマラは少し立ちどまりガープの姿を注視した
「……知らん!」
「ばーか!アホー!変なナンパしてんじゃねぇー!」
「違うわー!!」
海軍艦とロジャー海賊団の船がお互い遠ざかる中、声が聞こえる範囲までガープとロジャーは口論を続けたとか、いないとか……