第6章 親友
「……何してるんだ?」
クマラのそんな問いに、ロジャーは先程から全く変わらない体勢のままで返答はない。どうした物かと首の後ろに手を回したクマラは、近くの燭台を取って火をつけた
蝋燭の火が辺りを淡く照らすと、その範囲内に居たロジャーの姿が映し出される。昼間に見た時とは違う死んだ魚のような目で、まるで生気が無いそれにクマラは心臓が跳ねた。本当に生きているのか、死んでいるのか分からないロジャーを見て、クマラは一度心を落ち着かせて燭台を机に置く
「ロジャー、寝ぼけてるのか?」
「……」
相変わらず返事はなく、ただぼーっとクマラを見続けるロジャー。つんつん、とクマラにつつかれると目を細める
寝ぼけてるんだろうなと思ったクマラは、よっこいせと自身より40cmばかり大きなロジャーを肩に担ぎベッドまで運んだ。子供たちにやるように布団を被せ、ポンポンと眠りに着けるようにと優しく撫でるように叩く
「……ん」
「子供かお前は」
表情は一変せず、まぁ部屋の主が言うならばとクマラは布団に潜った。ロジャーよりも小さいクマラは、ロジャーの腕の中にすっぽりと収まる形で何とか場も治まる
少し納得がいかぬままだが、何とかなったならもういいかとまた目を瞑るクマラ。スリスリとクマラの髪に頬擦りしながら眠りにつきそうなロジャーを他所に、当の本人はそのまま眠りへと落ちていくのであった
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(「大丈夫……みたいだな?良かった」)
(「?なんだよいきなり」)
(「いや何、ロジャーと同じ部屋に寝た奴は大抵肉団子になって発見されるもんでな……。良くて首がもげてるもんだから少し心配だった」)
(「おい金髪野郎、そういう事は事前に言っとくもんなんだよ乗り越えた後に後出しすな」)