第5章 愛しのパパから贈り物
カタクリは、鏡に映る自分の姿をじっと見つめた。すり、と指先で縫い目を撫でると、父に撫でられた時の感触が蘇る
「……しんぱい、してくれたのか」
最初は冷たい人だと思っていた。でも、それは上辺だけで中身を知ればとても暖かい人である事がわかる。どこか違和感を持つ事もあるが、そんな事が些細だと思えるほど彼は“父”なのだ
鏡から目を逸らし、そっと部屋の扉に近づくカタクリ。グースカと眠る弟達から一時離れて、カタクリはある部屋へと歩み始めた
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薄暗い部屋に、カタクリは一人とある人物を尋ねてやってきた。来たことの無い部屋のため少しばかり緊張しているのか、いつも以上にキョロキョロとしている
スっ、と扉の音を立てず中に入ると、すぐ様ロウソクに火がついた。ビクンと身体が震える中、その蝋燭はカタクリが会いたかった人物を照らし出す
「どうしたカタクリ。もう寝る時間だ」
優しく諭すような声色に、カタクリはゆっくり近付きその身体に抱きつく。寝る時はマントを取るからか半裸だが、それが温もりをよりリアルにカタクリへ伝える。子供ならばとっくに眠る時間のためか、目的の人物に会えたカタクリの瞼は徐々に重たくなっていった
「……甘えん坊だな、カタクリ」
愛しげに息子を呼ぶ声がカタクリに聞こえる。その声はとっても心地が良くて、一気に微睡みは増した。大きく武骨な手で頭を撫でられると、少しでも気を抜けば眠ってしまいそうな域に達する
まだ少し、もう少しだけと踏ん張るカタクリに対し、最後の誘惑がやってきた。そっとカタクリを抱き上げたクマラが、そのままロウソクを消して布団の中に潜り込んだのだ
父と共に布団に包まれたカタクリは、ああもうダメだと瞼を閉じる。初めて感じる父の感触に、初めてではない気がするとその厚い胸板にカタクリは頬を寄せた。どこかで感じた、温もりと安心感。それらを感じつつ、カタクリは限界に来たのか意識を手放した