第5章 愛しのパパから贈り物
「ペロリン♪パパは魅せるお菓子も作れるようになったみたいだ」
自身に宛てがわれた、光を通し鮮やかな色を映し出す球体型の透明な飴を見つつペロスペローは笑った。それを見てカタクリはまたドーナツに目を向ける
装飾は、食べるのに邪魔にならない程度に施されているもののその見事な見た目には二歳のカタクリでも“キレイ”だと思わせ、見とれる程であった。食べるのがもったいない程だと思っているが、どら焼きを食べ終わったオーブンの視線に気付きそちらへ顔を向ける
「……なに」
「食べないなら……」
「食べゆもん」
オーブンはもう食べただろ、と言わんばかりに手に持っていたお皿をテーブルに置き、一つ頬張る。その瞬間口に広がる甘さにカタクリはほろりと顔を蕩けさせた
「おいし……」
「そうだろう?ふふっ、いっぱいお食べ」
ペロスペローに紅茶を渡され、カタクリは我慢できないと次から次にドーナツに手を伸ばしていった。外はサクサクで、中のふんわり感が堪らない。デコレーションとドーナツ本来の味がマッチしてカタクリを飽きさせなかった
ペロリと平らげな後、紅茶を飲み干し歯磨きをした後いつも通りの時間を過ごして就寝の時間がやってきた。カタクリの頭の中には、延々とおやつの時間に食べたドーナツの事が忘れられずにいる
「ドーナツ……」
顔も覚えてない、父の作ってくれたドーナツ。どこから食べても美味しくて、キレイで、素敵なドーナツ。よりどりみどりなあの光景を、カタクリは脳裏に焼き付けていた。また今度、あれを食べたいと
その時には、その“パパ”と一緒に食べたいな。なんてカタクリは未だ見ぬ父の姿を想像しつつ瞳を閉じる。おやつの時間に感じた幸せと幸福感は、カタクリに大きな衝撃を与える事となった