第3章 若き四人の海兵
センゴクは戸惑っていた。何十年も前の伝説をこの目にし、正常な考えが出来ていない。もしその伝説が全て真ならと、いつものセンゴクならば考えもしない事が頭の中を占めている
サマトクマラの身体は不老不死。その血を分け与えられた者はどんな病も傷も忽ち治ると、伝説としてセンゴクの故郷では言い伝えられていた。どこが起源であるかは知らないし、彼の母だって自身の親から教わったただの御伽噺だと話していた。だから、目の前で言い伝えと同じ名で、不老かは分からないが不死である事が証明されたクマラの存在を確認し平常では居られなくなっている
そんなセンゴクを見て、クマラは首を傾げつつ「それがどうした」と問うた。センゴクは余計困惑し、咄嗟に言葉が口から出る
「治して欲しい人がいるんです」
「……」
自分の傷か、とクマラはセンゴクの身体を眺めた。左腕は骨折しているのかギプスをはめられている。世界政府はまともに自身のことを公表していないようだが、気まぐれで助けた人間がそれを周りに話せば噂として広まるのも無理はない
充分助けた。義理はないと口にしようとした時センゴクの口からまた言葉が出る。その言葉は、クマラが予想していなかった言葉で
「仲間が……友が危機なんです!俺より酷くて……っ」
「えっ、ゼファーの奴もうそんなんなってるのか!?」
センゴクの言葉を聞いたガープは、急いで海軍船の方へと走っていった。センゴクはそれを見送り、再度クマラに「駄目ですか」と聞く
少し考える素振りを見せたクマラは、こういう人間もいるのかと少しだけ感心してセンゴクの方へと向き直った。その瞳は不安げで、受け入れてくれるかという不安よりも今生死を彷徨う友の事を思っての不安であると、長年生きてきたクマラは察した
「……今回だけ、な。次はないぞ」
「!ありがとうございます!!」
深深と頭を下げたセンゴクは、その衝撃で痛んだ自身の傷に顔を顰めしゃがみこんでしまった。クマラは肩を竦めそれを担ぎ上げる
「えっ!?」
「お前もついでに治してやる。まぁ、血液型が一致しなかったら暫く寝込むが完全に治るんだからそれくらいは許容しろ」
「!?!?」
言葉にならない驚きを顔で表すセンゴクを他所にクマラは船へと向かう。彼にとって、これは気まぐれだ