第1章 episode1
『ごめんなさい…!』
反射的に謝ってしまう。
「いやいやいや!こっちだから!わりーのは!大丈夫?
スマホ落としてんじゃん…って、画面…元々割れてた??」
スマホを拾ってくれながらその人は早い口調で尋ねてきた。
『い、いえ…』
家族以外と会話することが久しぶり過ぎて、私は思わず口ごもった。
確かに受け取ったスマホの画面角にはヒビが入っていいた。
「じゃぁ俺じゃん!わりー…んと、申し訳ない。」
『い、いえ…ちゃんと動くので、だっ大丈夫です…すみませんでした。』
「確かに動いてんね。よかったぁ。ほんと?いいの?」
『は、はい…あの、、失礼します』
体格のいい、若い男の人。怖い。逃げたい。
私はその一心でその場から去ろうと歩き出した。
「おいッ!!」
他の通行人まで振り返るほどの大きな声。
驚きと同時に反射的に私も振り返る。
「そこ行きたいなら、そっちだと逆!気ぃ付けなー!」
とその人は意地悪そうに笑って手を振っていた。
恥ずかしいのか情けないのか、処理しきれないたくさんの感情が
溢れ出して、私は会釈だけして、助言を守らず走って間違った方向へ
逃げてしまった。