第1章 episode1
ココどこ…?
案の定、迷子になった私は兄に連絡を入れた。
電話で近くにある目印になるような大きな建物を伝えると
そのまま私が不安にならないよう電話を切らずに
走ってきてくれた。
ほんとに兄には頭が上がらない。
息を切らせながらも必死に私を叱る兄に
思わず笑ってしまった。
「それはそうと、洋服の趣味、変わったの?」
兄はひとしきり言いたいことを言ったあと問いかけてきた。
『ま…そんなとこ。』
「そっか。それも似合ってるよ!でも、前髪は切ってほしいかな?」
そう言いながらキャップを取り上げ
クシャクシャと頭を撫でてきた。
『もぉ!やめてよぉ。。』
こういう時間が私は好きだ。
兄の優しさを感じる時、私は幸せだ。
でも、今はこれから伝えないといけないことを考えると
素直に喜べない。あぁ…こんな自分が嫌いだ。
『お兄ちゃんあのね…私…話がある…ん。』
「知ってるよ。学校のこと…だよね?編入したんだって?母さんから聞いたよ。
俺に相談してくれなかったから、ちょっと意地悪な連絡しちゃった。
ごめんね?マコト。」
『え…?』
一瞬、時が、止まった。
知ってた?いつから?ごめんね?なんで謝るの?
兄はどこまでも優しい。
お母さんも…私は恵まれている。