第5章 episode5
荷物は最小限。私のものはどこにも置かない。常に持ち歩く。
本来、私はこの部屋に来てはいけない。
しかもみんなはまだ知らないが、彼らは毎日撮影をする。
それに決して映り込んではいけない。
もちろん影すら許されない。
撮影のネタ出し、買い出しや準備、後片付け、2人の見え方。
求められることにもてる限りを尽くす。
2人が同時に同じ部屋にいる時間は、いい意味で
少しピリついていて、早く過ぎた。
その後は、決まって富永さんはアルバイトへ。
佐藤さんはPC実習室へと消えて行く。。
私と2人の関係は器楽室が繋げてくれていた。
ドッキリ系の企画をするときは決まって
仕掛ける側から前日に連絡が入った。
グループラインを作ってくれたが一度も稼働したことはなかった。
個人のトークルームは
今日はドッキリなので来なくていいです。
了解しました。
今日は準備不要なので来なくていいです。
了解しました。
今日はネタ合わせのみなので来なくていいです。
了解しました。
こんな内容ばかりで埋め尽くされていた。
私はぼんやりと
どちらに対しても了解しました。以外返したことないな…
なんて思っていた。
手探りで始めたサポート。
これでいいのかは、ずっと疑問だったが
私以上にこのことを心配してくれていたのは
兄だった。