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夢過ぎる水溜りボンド

第4章 episode4


声の主は、彼。
目線が合うようになのか、お客さんから隠れているからなのか
かがんで話しかけてきた。
振り返ると顔の距離が思っていたよりグッと近かった。

『な…なんでしょう…?』

「今から外、出れる?PさんにはOKもらってんだけど。」

耳元で言われたため、にぎやかな会場でも彼の声は頭にこだまするように聞こえた。
私は、思わず体温が上がるのを感じた。

『え?あ、はい…。』

この距離で、さらに兄が了承済みと言われると断われる理由なんてなかった。

パーカーのファスナーをグッと上げて
急いでノートをリュックにしまっている間に、
彼は私が預かっていた貴重品が入ったカバンをスッと他のスタッフに託していた。

「行ける?行こっか。」

そう言って、私の返事も聞かずに歩き出した。
私も続いて追うように会場を後にする。

どこに行くんだろう…

会場を出てすぐに誰かと電話をしだした彼は、もくもくと歩く。
スピードが早く、ついていくのがやっと。
電話を切ったと思ったら

「ここ。」

そう言って、彼は一軒のカフェで足を止めた。


チリン♪チリン♪


ドアに付いたベルが高い音で鳴る。
見る感じ、店長らしき人とは顔見知りのようで、ズカズカと奥に進む。


「お疲れ~」

店の一番奥まったテーブル席には
彼の相方いて、私のようにキャップを目深に被りパソコンを見ながら
声に答えるように、手を上げた。

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