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夢過ぎる水溜りボンド

第4章 episode4


結果から言うと、兄のナショグル初ライブは盛況に終わった。
お客さんも満員御礼!立ち見が出るほどだった。
私は当日、会場最後列の中央カメラ席の近くで
貴重品の管理。と、メモ。
皆と同じTシャツを着ているだけで誇らしい気持ちになった。

とはいうものの人に声をかけられるのが怖くて
上からパーカーを羽織ってしまったけれど…

それでも以前の兄のライブとは全く違く感覚だった。

ステージが始まると私自身の感覚も研ぎ澄まさてていき
メモとる手がいつもより走った。

会場はどんどん熱を帯びてゆき
トリが来る頃には最高潮に達していた。

トリを飾ったのは【水溜りボンド】。
例の彼のコンビ。

初めてだな…あの人のネタ見るの。

そう。ほとんどのメンバーのネタは見たことがあった。
でも、彼らだけは練習場で練習していない。
練習場にはいつも顔を出すだけ。どうやら別に場所を借りて籠っているようだった。
しかし、みんなが「彼らは天才」と噂していることだけは知っていた。

実際にこの目でみた彼らのネタは
確かに他の人たちとは違う独創的なものだった。
小道具も手が込んでいて、本番前に音響スタッフと入念に打ち合わせしていただけあって
最大限に音の効果も活きていた。
それは「ネタ」というよりも一つの「作品」として完成されている印象だった。

メモを取る手に汗が滲む。
視線を外せない。一瞬一瞬を見逃せない。
2人が創り出す世界に魅了されたのは私だけでなく
会場のお客さんも同じだったようで、確実に今日一番の盛り上がりをみせた。

最後に演者全員がステージに上がり挨拶をした。
そののち会場全体で演者とお客さんが交流を楽しんだ。


私は席に座ったまま心の中の冷めない熱い余韻に浸っていた。
その時、立ち見がいなくなったはずの後ろから声をかけられた。



「お疲れ。な?ちょっと、い?」
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