第3章 漢ローの冒険記 よみがえる走馬灯
ももを家まで送ったあとは、どこにも寄らず自分のマンションに帰宅した。
リビングのカーテンを開けると日差しが入ってきたが、遠くの空はもう夕暮れの色をしている。
窓を開け、キッチンに置いてあるコーヒーメーカーの電源を入れて、白のロングTシャツとジーンズに着替える。
「…ハァ」
ため息が出た。
さっきの自分のあの態度はなんだ。
ももも、俺を心配そうな顔をして見ていた。
ウジウジしている自分に、腹が立つ。
こんな気持ちになったのは初めてだ。
コーヒーメーカーから出来上がりのメロディが流れ、コーヒーをマグカップに注ぐ。
一口飲み込んでみたが、胸のモヤモヤも一向に晴れる気配はなかった。
ももをBarで見つけて、妙なテンションになっていた。
二軒目に誘い、ホテルの部屋を別々にとったところまではよかった。
ホテルのBarで飲み直すところまでも、よかったハズだ。
問題はその後。
俺がももを部屋に送ったことだ。
ももにキスをされた事で理性を失い、ももを無理矢理抱いちまった。
それに今朝も、反省するどころか起き抜けのももに興奮して、ももの話もロクに聞かずにそのままヤっちまった。
その罪滅ぼしかのように、甲斐甲斐しく世話をやいた自分にも腹が立つ。
いや、本当にそうしたくてしたハズだ。
ももは昨日の事を覚えていないと言っていた。
それは本当の事なのだろうが、酒を飲めば本音が出る。
ももは途中で何か言おうとしていた。
「アイツは何を言おうとしていた…?」
マグカップの中のコーヒーを飲み干し、寝室のベッドに体を沈める。
目をつぶるだけで、ももの顔がすぐに思い浮かんでくる。
こんなに一人の女性に固執したのは、生まれて初めてだった。
何人かセフレにしている女は居るが、こんな気持ちになった事は微塵もない。
それに、自分があんなに興奮したのも初めてだった。