第8章 届かない宝 【カリム・アルアジーム】
「なぁ!いつか何処か遠くへ行こう!!」
本当は今、遠くへ行ってしまいたい。手を繋いだままどこか遠くの、誰も知らないオアシスへ。
「私は、ココで充分ですよ。」
「……そうなのか?」
俺が首を傾げると彼女は目を細めて言った。
「カリム先輩が隣に居れば充分です!!」
祖国の太陽みたいな笑顔が懐かしいと思った。
「ソレで良いのか?もっと色々…。」
「ソレじゃ無きゃ駄目なんですよ!」
俺の手を取る小さい手を守りたいと思った。
「じゃあ、ずっと傍に居る!!」
腕の中に収まった彼女を離したく無いと思った。
「全部、俺に任せたらいい!!」
この腕の中にある宝石には手が届かない。何となくそんな事を思うのは何故なんだろうか。
「…毎度一緒に飯食って、腹ごなしに踊って。」
ソレでも、離したくないとそう思うから。
「一緒に眠って、朝から甘いお茶飲んでさ!!」
これが多分、好きだと言う事だと分かったから。
「俺、毎日幸せしかない世界を作るからな!!」
そんな願望を言ったら彼女はまたクスクス笑った。
「カリム先輩の隣は暑いくらい暖かいです。」
その顔に目を奪われて、顔が__カッと暑くなった。
「あ、あれ?真っ赤ですね。踊りすぎました?」
「……え、あ。…そうなのかもしれないな!!」
覗き込む顔がやたらと可愛らしく見えた。