第5章 タルトタタン【トレイ・クローバー】
□タルトタタン(トレイ・クローバー)
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「良いんですか?こんな美味しそうなタルト。」
「遠慮するな。ちょっと焼きすぎたんだ。」
色とりどりの数種類のフルーツタルト。
お茶会の時にこっそり1切れづつ取っておいた。
「…悪いね、君の好きなアッサムがないから
今日はダージリンだ。…勘弁してもらえるか?」
きっとこのタルトにはダージリンの方が合うから。
とは言わないことにした。
「と、とんでもありません。
寧ろ…あの。何から何までやってもらって…。」
申し訳なさそうに眉を下げる姿に口角が上がる。
「どうぞ、…ストレートフラッシュだ。」
この良い香りのお茶を、
彼女は知っているだろうか。
1番早く摘み取ったこの茶葉の香り。
「……わぁ…凄い良い香りですね。」
「そうだろう?コレのお供はどれがいい?」
澄み切ったこの紅茶には
砂糖を入れないのが通例だから
その代わりに甘いタルトを用意した。
「……あの、トレイ先輩。」
「ん?なんだ?…迷ってるのか?」
迷うのも無理もない。
どれも色鮮やかで美しい美味しそうなタルトだ。
そう自画自賛するほど、
このテーブルは華やかに彩られている。