第4章 平凡な黒真珠 【ジェイド・リーチ】
「…そうですねぇ。コレで分かりますか?」
「…………え?」
紅色の小さな唇がとても甘い果実に見えたので、
迷わずそれに齧り付いた。
「……え、あの。え!?」
「……すいません、やっぱり貴方に
意見を聞くつもりはありません。
次に帰ろうとしたら珊瑚の海の奥底に
人のまま閉じ込めてしまいましょう。」
「え…。こ、怖い。何それ。」
甘い果実より甘かった唇を忘れたくないから、
もう手放す事は辞めにした。
「大丈夫です。閉じ込める部屋は
人のままでも生きていられるように
適切に処置して差し上げます。」
「いや、そういう問題では…。」
この戸惑った様な、怯えたような。
可愛らしい赤い顔を何時でも見たいと思うから。
「……僕は貴方を愛している様です。」
ずっと、離さず…傍に置いておこうと思う。
「もう、貴方の事を絶対に、逃がしませんので。
覚悟して頂いてもよろしいでしょうか?」
「………え、えぇ。」
「おや、嫌なんですか?僕では不満ですか?」
「…そ、そんな事は…無いです…けど。」
なんてことない平凡な黒真珠。
___ 僕はソレが、この世で1番愛おしい。