第4章 平凡な黒真珠 【ジェイド・リーチ】
□平凡な黒真珠 (ジェイド・リーチ)
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「おや?1人だなんて珍しいですね。」
珍しく1人で中庭のベンチに座っていたので、
ほんの気まぐれで声をかけた。
「ジェイド先輩。先輩こそお独りですか?」
彼女は特段何かが優れているという訳ではない。
容姿が端麗であるとか、声が美しいとか、
頭脳が明晰だとか、やたらと品がいいとか。
そんな特質すべき点は1つも見当たらない。
「はい。今日は天気が良いですから。」
「…こ、答えになってないですけど。
…けど、そうですね。とってもいい天気です。」
普通で平凡で、
街ですれ違っても覚えていないだろう。
そんな人間は、ただ笑顔が柔らかい。
それだけが取り柄のように思える。
「…たまには良いですね、こういう時間も。」
「ですねぇ…。静かで落ち着きます。」
そして、彼女の隣は何故だかやたらと心地良い。
まるで当たり前の様に隣に座って、
当たり前の様に息をする。それが異様に心地良い。