第3章 偽物王子 【ラギー・ブッチ】
□偽物王子(ラギー・ブッチ)
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何故この女はこんなにタイミングが悪いのか。
「に、逃げるっすスっ!!
てか何でいるんスか!?訳わかんねぇっ!!」
「う、わぁっ!!ま、待ってっ!!」
「待ってたら捕まるでしょ!
ほらっ、ちゃんと走って下さい!
俺、怒られるのはごめんなんスよ!!」
仕方なく彼女の手を取って夜の中庭を走った。
ちょっとした罰ゲームでジェイドの背中にタコのシールを貼る。なんて言う下らない事をしていたら、物の見事に巻き込まれたお馬鹿さん。そのお間抜けは、随分足が遅いらしく手を引いたところでスピードは変わらなかった。
「ちょ…と、ま、まって。」
「あー、もうっ!!仕方ないっスね!!」
「……え、………う、うわぁっ!!!」
「(阿呆だから囮にも使えないしなぁ…。)」
この阿呆では囮にもならない。
寧ろ置いていったら状況が悪化する。何故かそんな事を思って足の遅い小動物を抱え込んだ。
「…………ふっ、ふふっ。」
「なんで笑ってるんスか!!」
抱えて走り出した数秒後、彼女は楽しそうに笑い出した。静かな中庭にはその_クスクス。とした笑い声と自分の息の切れる音、それから芝生を蹴り飛ばす自分の足音が妙に響く。