第9章 人類の希望→感情の変化
「とりあえず・・・エレンは無事だったて訳だな?」
ジャンが一人で納得している。
審議が終わり、フーリ達3人は訓練所に戻ってきた。
「今頃、リヴァイ班の中で媚でも売ってんだろ。」
トロスト区奪還の日からだいぶ日にちが立っていた。
あの日からジャンの様子がおかしい。
「それもしかたないか・・・。」
フーリはジャンの背中をじっと見た。
あの戦いでジャンの親友であったマルコは死んでしまったのだ。
マルコの死を104期訓練兵であるフーリ達も悲しんだが、ジャンはそれ以上だった。
アルミンもミカサもジャンの言い様に何も言わなかった。
フーリは戦死した兵士たちの遺体を燃やしている炎を見つめた。
どれだけの人間が死んだのか・・・
予想なんてつかない。
私は・・・死ぬことに対して何の抵抗も無かった。
こんな馬鹿げた世界なんてどうでもいいと思っていた。
・・・でも、今は違う。
ジャンの様に大切な親友を失ったわけでも・・・
エレンの様に自分の存在がわからなくなったわけでもない。
それでも、この心の中から溢れ出す喪失感・・・
きっと・・・あいつがくれたんだ。
あのチビが・・・わからせてくれたんだ。
私は決してこの世界に生きる意味が見いだせなかったわけじゃない。
見ていなかっただけなんだと。
親に捨てられたことによって感覚が麻痺してたのかも。
その時フーリの目から涙がこぼれた。
なんで・・・今さら。
自分を捨てた親なんかに寂しいというの?
・・・寂しい、悲しい、一人は嫌
ずっと思ってたはずだ・・・
気づかなかっただけだ、逃げてただけだ。
ねぇ・・・リヴァイ兵長、あんたは私のそんな心を見ぬいたの?
私は汚れてしまった・・・落ちないかもしれない。
それでも・・・生きなくてはいけない。
人間である限り・・・!!
仲間に思いを託して死んでいったもの達のために・・・!!
そしてフーリは銃の欠片を炎の中に投げ入れた。