第2章 雨の金曜日【文スト太/宰/治】
「さて、本題に戻ろうか。どうしたんだい?」
『いや、傘忘れたので走って帰ろうかと』
「私に相談すれば良いのに」
『太宰さん、傘持ってるんですか?』
「持ってないよ?」
さも当然と言った顔で首を傾げる太宰さん。
あぁ、もう………
この人に聞いた私が馬鹿だった。
「君の家に行くより、私の家の方が近いんじゃないかな?」
『……そんなに近くなんですか?』
「うん。それに……」
『それに?』
「雨、さっきより酷くなっているけど?」
『え"?!!』
振り向くと雨はさっきの強さ以上に強くなっていて、
目の前が雨の所為で白くなっている。
「この強さじゃあ……ね?」
ニタァ……と妖しい笑みを浮かべる太宰さん。
「もう来るしかないよね?」みたいな聞き方止めてくださいよ。
こうなると、もう家には帰るに帰れないだろう。
『……わかりましたよ…』
「わぁ、来てくれるのかい?やったぁ」
まぁ、無邪気に喜んで……
っていうか私が太宰さんの家に行くことのどこに
そんな喜ぶことがあるのだろうか……(?)
(寂しかったのかな……)
等と甘く考えている私は
太宰さんがニヤリと妖しい笑みを浮かべていただなんて
この時は思いもしなかった。