第2章 命の代価
腕とも言えない右腕を抑え叫び続ける教主にエドが頭突きをくらわす。
「うっさい!!ただのリバウンドだろうが!!腕の一本や二本でギャーギャー騒ぐな!!石だ!賢者の石を見せろ!!」
「ひィ…いっ…石!?」
その瞬間、教主の指輪に埋め込まれた賢者の石はカランという音を立て砂のように崩れてく。
「壊れ…た…」
「どういう事だ!「完全な物質」であるはずの賢者の石がなぜ壊れる!?し、知らん知らん!!私は何もきいてない!!」
「偽物…?」
必死も助けてくれと命乞いをする教主の言葉に耳を傾けずぶつぶつと呟くエド。
教主の襟元から手を離したと思うと力なく地面に崩れ落ちる。
「おい、おっさん。あんたよォ…。街の人間だますわオレ達を殺そうとするわ。しかもさんざん手間かけさせやがってそのあげくが「石は偽物でした」だぁ?」
ダラダラと教主に問い詰めながらも巨大な石像を錬成していくエド。
ただただ大きくなっていく石像を口を開けて見上げる教主。
「ざけんなよコラ!!神の鉄槌くらっとけ!!」
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「ハンパ物?」
「ああ、とんだムダ足だ。やっとおまえの身体を元に戻せるかと思ったのにな…。しょうがない、また次さがすか…」
立ち上がるエドはふと思い立ったように辺りを見渡す。
「おい、アル。さっきのコート野郎どこ行った?」
「え、ああ!ほんとだ!確かに一緒に部屋を出たのに!」
一緒に辺りを見渡すアル。
「そんな…。うそよ…だって…生き返るって言ったもの…」
そこにはへたり込んだまま呆然とするロゼがいた。
「あきらめな、ロゼ。元から「…なんて事してくれたのよ…これからあたしは!何にすがって生きていけばいいのよ!!教えてよ!!ねえ!!」
「そんな事自分で考えろ。立って歩け、前へ進め。あんたには立派な足がついてるじゃないか」
そう言い残し、エルリック兄弟は街を後にした。