第1章 2人の錬金術師
「…ル!アル!アルフォンス!!」
―――――叫ぶ。
「くそ!こんな事があってたまるか!」
―――――ただ、叫ぶ。
「こんな…こんなはずじゃ… …畜生ォ」
痛みを伴わない教訓には意義がない。
「持って行かれた………!!」
人は何かの犠牲なしに何も得る事などできないのだから
〇第1章〇 2人の錬金術師
〈この地上に生ける神の子らよ、祈りを信じよ、されば救われん。太陽の神レトは汝の足元を照らす。見よ、主はその御座から降って来られ汝らをその諸々の罪から救う。私は太陽神の代理人にして汝らが父……〉
「……ラジオで宗教放送?」
「神の代理人…って。なんだこりゃ?」
「いや、俺にとっちゃあんたらの方が「なんだこりゃ」なんだが…あんたら大道芸人かなんかかい?」
その一言に金髪の少年、エドワード・エルリックは飲んでいたものを吹きだす。
「あのな、おっちゃん。オレ達のどこが大道芸人に見えるってんだよ!」
「いや、どう見てもそうとしか…」
金髪の少年と鎧を交互に見て言う。
ラジオの宗教放送に混ざって、「ヨロイ!すげーでけー」といった子供たちの声まで聞こえる始末である。
「ここいらじゃ見ない顔だな、旅行?」
「うん、ちょっとさがし物をね。…ところでこの放送何?」
「コーネロ様を知らんのかい?太陽神レトの代理人!コーネロ教主様さ」
「…誰?」と呟くエドを傍らに、店の客たちがコーネロ様の偉大さを語っている。
「…って、聴いてねぇな、ボウズ」
「うん、宗教興味ないし。」
ごちそーさん、と言って席を立つ。
それに続いて、横の鎧も後に続く。…が。
ごち。
何かがぶつかる音がしたと思ったと同時にバゴっという鈍い音を立てラジオが落下し、粉々に。
「あーーーー!!! ちょっとお!!困るなお客さん、だいたいそんなカッコで歩いてるから…」
「悪ィ悪ィ、すぐ直すから。まぁ見てなって」
何やら鎧の方が、壊れたラジオを囲う様に円を描いている。
そして一つの絵とも言えない様なものが描かれると同時に、
「―よし!そんじゃいきまーす」
「? …ぅわあ!?」
ボ!!っという爆発音と共に地面の砂埃が舞う。
そこから現れたのは壊れたはずのラジオ。
教主様の宗教放送もしっかり聞こえてくるではないか。
これには客たちも驚きを隠せない。
奇跡の業だの、エルリック兄弟だの賑やかな店に一人の来客が来る。