第65章 *勃発エマージェンシー*
霧に苦しむカリムたちをできるだけヴィルから離すように、誘導したルークの脳内に1つの疑問が浮かぶ
ルーク『しかしたった一杯のジュースが、ここまでの変化をすることがあるだろうか?..はっ、まさか!』
ヴィル『お願い、見ないで..そんな目で、アタシを見ないで!
どうして?世界で1番美しくありたいのに、なんでこんなにもアタシは..醜い、醜い、醜い!!!』
ルーク『毒の君..君が醜いはずがない!』
カリム『そうだよ!ネージュもルークも、ジュースを飲まずに済んだじゃないか!お前はまだ誰も傷つけてない。だからヴィル、目を覚ませ..げほっ、げほっ!』
ヴィル『おだまり!あんたたちに何が分かるっていうの!?世界中の誰が許しても、アタシは、アタシが許せない!』
ジュワァァァ!!!
カリム『ヴィルの体から、黒いインクが..!あれはジャミルの時と同じ..ゴホゴホッ!』
グリム『ゲホッゲホッ!あの毒ジュース、床をどんどん溶かしながら広がってくんだゾ!』
ユウ『触れたら僕たちもああなるの!?』
固いコンクリートが容易く溶かされていく光景にゾッと身震いしたユウの隣で、毒煙に咳き込みながらレイラは足を震わせて、ヴィルへと歩を進め始めた
『っ..げほっ!げほっ!』
ユウ『レイラっ!?ダメだっ!戻って!!』
ルーク『兎の君っ!?』
『っ!!』
慌ててユウが腕を掴もうとしたその時、それよりも早くレイラが駆け出し、ユウの伸ばした手は虚空をきった
レイラは僅かに侵食されていない床を器用に飛び移りながらヴィルの胸に飛び込んだ
ヴィル『!!??』
カリム『何やってんだレイラっ!!早く戻れっ!』
『や!もう、誰もオーバーブロットさせたくない..っ!』
流れ落ちるブロットを気にもとめず、ヴィルの背にきつく腕を回してその胸に顔を埋める
『..大丈夫、大丈夫だから。毒の人は、世界で1番綺麗だよ。綺麗になることに真剣なのも、厳しいところも優しいところもいっぱい知れた。"美しい"ってことにどれだけ力があるのか教えてくれた時の毒の人、すごくキラキラしてた...』
ヴィル『兎...』