第65章 *勃発エマージェンシー*
そう言ってヴィルは、片手に抱えていた林檎ジュースの瓶をネージュに見せる。それはエペルの実家から贈られてきた物の、そのまま飲めるようなサイズの小さな瓶だった
『あれ、林檎くんのところのジュース』
ユウ『だね。ただの差し入れ、にしか見えない』
『....違う』
ユウ『え?』
『あの瓶から、凄い魔力の反応がする...毒の人、何しようとしてるの..?』
ネージュ『あっ、それ!こないだマジカメにアップしてたやつだよね。飲んでみたかったんだ。嬉しい!ありがとう』
ヴィル『さあ、どうぞ。召し上がれ』
ネージュ『いただきます』
ヴィルから瓶を受け取ったネージュが早速蓋を開けようと指をかけた
『っ、ダメ..!』
危険だと悟ったレイラが隠れていた物陰から飛び出そうとしたその時
ルーク『ネージュくん!!』
ヴィル『!?』
グリム『ふな"っ!?』
突然ネージュを呼ぶ声と共に、ユウたちとは反対側の通路から現れたルークはにこやかに、だけど足早にヴィルたちの元へ近づいてきた
『狩人さん..!』
ルーク『歓談中にすまない。本番の演出について聞きたいことがあると、スタッフが君を探していたよ。
白雪の君(ロア・ドゥ・ネージュ)..いや、ネージュくん』
ネージュ『ロア・ドゥって、その呼び方..もしかして、あなたは..』
ルーク『ああ!!走って君を探していたら喉が乾いてしまったな。君が持っている林檎ジュース、冷えていてとても美味しそうだ。良かったら私に譲ってくれないかい?』
ルークの呼び方で何かに気づいたネージュの言葉を遮るように、ルークはネージュの持っている瓶を渡すように手を出した
ネージュ『は、はい!勿論』
ヴィル『!!』
ルーク『ありがとう。ネージュくん、急いでステージへ向かうんだ。そして、ここに戻ってはいけない』
ネージュ『えっ?それって、どういう..』
ルーク『さあ走って!!さあ早く!!』
ネージュ『は、はい!』
真剣なルークの表情と声に押されるように、ネージュは訳もわからないまま、その場を走り去って行った