第60章 *反発アイデンティティー*
カリム『過去って、あれか..』
レイラの過去を思い出したカリムは、悲しそうに床を見つめる
ユウ『そうです。二人も知ってる通り、あの子は..』
ルーク『失礼、ユウくん』
ユウ『はい?』
ルーク『私は彼女の過去を知らない身だ。このまま聞いても良いのか、立ち去った方が良いのか..』
ユウ『そうでしたね。じゃあ断片的にお話ししますので、どうぞそのまま』
ルーク『すまないね』
ユウ『いえ。合宿はまだ続くので、今後のためにもポムフィオーレ側の人にも、1人知っていた方が良いと思っていたところです』
ルーク『...凛々しい顔だ。君はいつでも彼女のことを考えているんだね』
ユウ『大切な子ですから。それに、一番近くにいる僕が、誰よりもあの子の事を理解してあげないと..』
そう言うと、ユウはキリッとした面持ちでルークにレイラの過去の一部を話した
・本当の親に疎まれていたこと
・捨てられ、見知らぬ集団に売ったこと
・何らかの理由で今でも狙われていること
黒兎であることや、それに関することは一切伝えはしなかった
それでもルークは深く入り込もうとはせず、話を聞き終わると同時にそっと目を伏せた
ルーク『...そうか。とても大変な思いをしながら、彼女は今ここにいるんだね。話してくれてありがとう、ユウくん』
ユウ『流石に全てをお話しすることは、本人の了承もないので出来ませんが。(今のところポムフィオーレの3人を信用してる訳じゃないみたいだし、聞かれても答えないけど..)』
ルーク『いや、充分だったよ。今ので彼女が何故先程泣いてしまったのかが理解できたよ』
カリム『そうなのか?』
ルーク『ウィ。彼女の両親は、よく言い争いをしていたそうじゃないか。しかも彼女の目の前で。そして、彼女自身にも毎日のように大声で怒っていた』
ユウ『更に、売られた先にいた男たちもレイラに対して大声で怒鳴り付けて、暴力を振るってた..っ』
忌まわしそうに表情を歪め、握られた拳が怒りで震える
ジャミル『ユウ、落ち着け。血が滲むぞ』
ユウ『..すみません。恐らくあの子は、誰かが本気で言い争っている姿や怒鳴り声を聞くと、過去の映像がフラッシュバックするんじゃないでしょうか』