第58章 *創造シルキー*
ユウは自分のいた元の世界のことが頭を過り、すぐに答えることができなかった
もし、帰る方法が見つかったその時は、必ずレイラと別れなければならない。そうなれば約束を違えることになり、レイラを泣き顔にしてしまう
そんな顔は見たくない。だからと言って元の世界に帰りたくないわけでもない
天秤が頭の中で重く揺れ動く
ユウ『....レイラ..僕は、』
『っ....ごめん。今の、聞かなかったことにして』
ユウ『え..』
『大丈夫、だから...ごめん』
半ば強制的に話を終わらせると、"おやすみ"と言ってユウの胸に顔を埋めて目を閉じた
ユウ『ぁ....おやすみ』
ユウは何かを言いかけるが、もう何も言うなというオーラを感じとり、そっと口を噤んだ。そして、しっかりレイラを抱き直すと静かに目を閉じた
暫くして穏やかな寝息が胸元から聞こえ始めると、ユウはそっとベッドから抜け出し、レイラの頬を優しく撫でた
ユウ『...ごめんね』
やっと見れたその寝顔は少し寂しそうにしていて、目元が僅かに赤くなっているような気がした
ユウ『レイラに気を使わせちゃったな...僕だって離れたくないよ。でも..元の世界のことを忘れるわけにはいかないんだ。
だから、その時が来るまでは絶対にレイラから離れないよ』
語りかけるように囁くと、ベッドから離れて談話室の方へと歩き出そうとした
その時、壁にかかっている鏡からぼんやりとした光が溢れる
ユウ『!?まさか...』
近づいてみると、コンコンと鏡からノック音と叩く手のシルエットが浮かび上がる。そして、ユウの目の前にその姿がはっきりと映った
ミッキー『ユウ、今日もそこにいるのかい?』